スウェーデン伝統刺繍 ヤルブソー刺繍(Jarvsosom)

7/06/2012



『Jarvsosom』
Berit Eldvik Brita Abrink  1979 LTs Forlag



この本はスウェーデンの伝統刺繍のひとつであるヤルブソー刺繍(Jarvsosom)の歴史や、刺繍のパターンをたくさんの図案や写真と共に紹介しています。

ヤルブソーはスウェーデンの中部ヘルシングランド(Halsingland)地方の小さな地域。中世の初めからリネンが栽培され織りが盛んだったヤルブソーはリネン産業のおかげで裕福な家が多く豊かなインテリア文化が育った地域でした。1つの家に存在する客用ベッドの数が経済や社会的ステータスを図る一つの方法だった時代、ベッドリネンの装飾は女性の能力を表現でする場でもありました。15や20のベッドを持つ事も珍しくなく、女性はベッドカバーやピローケースをヤルブソー刺繍で美しく装飾しました。


19世紀初頭まで贅沢品だったコットンでしたが、紡ぎ、染めの点でもリネンより利便性が高かった為、勢いよく普及。1830年代には安く手に入る日用品へと変化しました。しかし機械で織られたコットン布はクロスステッチなどの刺繍には向かず、そこでスウェーデンではヤルブソー刺繍に使われるようなフリーステッチ刺繍の技術が増えていきました。ヤルブソー刺繍や他の地域の刺繍にも見られる赤い色は、トルコレッドとよばれ、その綿糸はトルコ糸と呼ばれました。当時は赤い糸は東洋またはトルコから輸入されていたもので、ヨーロッパでは赤い糸を作る技術がなかったと言われています。その為、トルコレッドの糸はとても貴重で特別な時に使われていました。


最も古いヤルブソー刺繍は1847年に見られ、おそらく1840年代のフリー刺繍から発展したものと言われています。20世紀に変わるときに、ヤルブソー刺繍は突然消滅。1950年にSigrid Julinによって再発見されました。彼女は若い頃ヤルブソーで育ち、刺繍を習いましたが、1950年に地元に戻った時にヤルブソー刺繍が消えていることに気が付きます。それからその地域の女性にヤルブソー刺繍を教え始め、今ではスウェーデンで愛される伝統的な刺繍のひとつとなりました。


スウェーデン中部に住む白樺細工の先生カーリンのご自宅で見せていただいたクッションやベッドデコレーション。カーリンの出身はヤルブソー。どれも彼女の手刺繍です。トルコレッドが年月を経て淡いピンクへと変化しています。

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